お二人とも保険(ライフネット生命)や金融(ゴールドマン・サックス)などの経営管理・マネジメントに携わった後に現職に就いています。
日本のバブル経済の前後を見てきた二人は、なぜ日本が高度経済成長を成し遂げることができたのか。そしてバブルの後に、いまだ低迷を続けているのはなぜかを論理的に分析しています。
そして現在の日本に決定的に不足しているものは、「マネジメント」だと断言しているのです。(そういえば、かつての私はマネジメントの意味をよく知りませんでした。管理者なんだから管理すればよいのだろうくらいの意識でした。これでは良いマネジメント、良い組織運営はできませんね。)
出口治明氏は対談の中で次のように述べています。
平成の30年間のデータを見ると、日本は危機的な状況にある。しかし驚くことに、いまだに「欧米の強欲な資本主義とは違い、日本の経営はすばらしい、三方よしだ」などと言う評論家や学者がいるのも事実です。僕は彼らにいつも、次のように質問しています。
「日本の経営がすばらしいのなら、なぜアメリカ、ヨーロッパ、日本という3つの先進地域の中で、日本の成長率がいちばん低いのか」「なぜ日本人は年間2000時間も働いているのに、1%しか成長しないのか」
まともな答えが返ってきたことは一度もありません。この問いの答えは、日本のマネジメントがなっていないということ以外にはないのです。こういう当たり前のことを、「原点から考える」訓練ができていないところがいちばんの問題ではないかと思います。
マネジメントのトップ、つまりリーダーたちが勉強して意識を変えれば、日本も変わると思います。(以上抜粋)
デービット・アトキンソン氏は次のように述べています。
いちばんの原因は、日本人が「分析をしない」ことにある。「日本ってスゴイ!」と喜ぶだけで、何が成長の要因だったかキチンと検証しませんでした。
「日本人は手先が器用だから」とか、「勤勉に働くから」とか、「技術力がある」からなど、直接関係のないことを成長要因としてこじつけてしまい、「高度成長した=日本人すごい」「技術力があるから日本経済は復活する」と直感的に決めつけてエビデンス(根拠)やロジック(論理)を求めない頭の使い方をする。
日本の経済成長は人口増加の寄与度が大きかったのですが、それが見えなくなってしまった。
平成の生産性向上要因を分析すると、人的要素も物的要素も他のG7諸国とほとんど変わりません。しかし、マネジメントが最も関係する生産性向上は、諸外国ではものすごく伸びているのに、日本ではほとんど伸びていません。
つまり、日本に決定的に不足しているのはマネジメントだということは、はっきりとエビデンス(根拠)として出ているのです。やはり、日本の経営者は才能がない。失われた30年の根本原因はマネジメントが悪いから、それに尽きます。
人口減少に直面している現代は、高度な経営が求められます。しかし今の経営者は、自分たちが変わらないといけないということに気づいていないのです。
ほかの先進国ではすでにこのことに気がついています。人間の限界を理解している。データで徹底的に分析することによって、勝手な思い込みをする人間の欠点を取り除く経営が進んでいるのです。マネジメントは科学なのです。(以上抜粋)
対談の抜粋を読んで、皆さんはどのように考えますか。
2019経済産業省白書では、これからの日本の企業組織には管理者のマネジメントが重要になると記されています。そのほか日本の省庁の多くが何らかの形でマネジメントの必要性に触れています。
かつて私の職場だった郵便局にも民営化を契機にマネジメントが導入されました。そのとき、民間企業になった郵便局には自らの存在意義を考えるためのマネジメントが必要だと感じた人と、今までと同じ手法で運営すればよいのだからマネジメントは不要だという意見がありました。
中国の故事に「隗より始めよ(トップが実践せよ)」とあります。今考えると郵政民営化は自らを変革するチャンスでした。しかし、郵便局にマネジメントは定着しませんでした。
昨今のかんぽ営業問題などを見るとき、マネジメントが定着していたらどのようになっていたのかと考えます。なぜなら、マネジメントにはコンプライアンスや倫理も含まれます。そして、私たちにとって、なにが大事なものかを教えてくれるのです。
何気ない日常の仕事のなかにも、今まで経験したことのない問題や課題が見えたときにも、マネジメントが個と組織の在り方に大きな影響を与えていることを思い出したいものです。
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