あらすじ
身の回りでもっとも多い抽象的な問題は、ます具体的な小問題に分解したのち、それぞれの解を考えます。最後に、得られた解を取りまとめ、元の問題の解とします。この始めのプロセスは思考を言語に変換する作業なので、「言葉力」がとても大切です。
※このブログは つぎの記事の続編です。
小説『雪国』の英訳
問題解決のプロセスと言葉力の関係を、つぎの例題で説明します。
この例題は、よく英文法の本で見ましたが、近ごろ読んだ教育者の狩野みき氏※の解説は説得力があります。以下、そこから引用した要約となります。
日本語はいろいろなものを省略するが、主語はその典型。そもそも、主語などという概念がないという学者もいる。
英語にも省略はあるが、前に出たもののくり返しになるから省略する。省略したものは文脈から見つかる。
日本語は、(省略したものを)受け手が穴埋めすることで、コミュニケーションが成立する「受信者責任」の言語、英語は発信する側がすべてを表現し尽くさないといけない「発信者責任」の言語と呼ばれる
ここに日本語を母国語とするひとの「考える」ことの落とし穴がある。あいまいさに気づかないまま思考を進めている。
さらに狩野先生の主語の問題の答の解説はつぎのとおりです。
『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった』の主語は前半と後半で違う
前半の「長いトンネルを抜けたのは」の主語は、「汽車」、「乗っていた島村」、あるいは「島村を乗せた汽車」のどれか
後半の「雪国であった」の主語は、「汽車」でも「島村」でもない。「そうして着いたところは雪国であった」と解釈するのが妥当で、主語は「そうして着いたところ」となる
それを英訳すると野暮ったくなるので、サイデンステッカーは主語をThe train (汽車)に統一して意味的に問題がなさそうと考えたのだろう
ー引用おわりー
問題を論理的に分解する事例
日本語の省略は、良い面として「あうんの呼吸で心を伝え」ます。しかし、悪い面として「問題解決のプロセスであいまいさや思い込み、誤解を与える」といった落とし穴もあります。では、このことを頭において事例をみていきましょう。
最初は抽象的な問題のあいまいなところを穴埋めし、具体的にしていきます。主語に注意して、複数の文章が結合していればそれを無理やり分けます。
北海道の空港が民営化されるけど良くなるのだろうか?
北海道の空港が民営化されたら、私のまち(美瑛町)はよくなるかな?
(計画によれば)北海道の民営化で旅客数が最大〇〇万人増える可能性がある。私のまち(美瑛町)の観光客はどれぐらい増える可能性があるかな?
北海道の観光客が旅客数が最大〇〇万人増えたとすれば(仮説)、美瑛町の美瑛町の観光客数は△△万人増える可能性があるか?--(と言いたい)
論理的には、(A.北海道7空港の旅客数増加)と(B.美瑛町の観光客数増加)の関係を求める問題になりました。
しかしAとBを関係づける統計はなさそうなので、
まず(A.北海道7空港の旅客数増加)ー(C.旭川空港の旅客数増加)ー(B.美瑛町の観光客数増加)の形でアプローチすることとし、
A-Cの関係、C-Bの関係を個々に検証すれば、求めたいA-Bの関係が判るはずだ
まとめ
以上で、与えられた問題が3つの小問題A,B,Cに分解できたので、(続編にて)北海道エアポート㈱の計画書の数字とチャートをつかいながら(B-美瑛町の観光客増加)の可能性を求めたいと思います。
(B-美瑛町の観光客増加)の可能性が判ったときはじめて、実現のためにしなければならないこと(課題)とアクションプランを導くことができることとなります
与えられた問題の答の出しかたを先に考える、たとえばスキージャンプでいえば着地の仕方をはじめに考える、応用問題でいえば先に方程式を作っておくということ、そして言葉力が何より大切な役割を果たしたということですね。
この事例は数字を求めるものですが、数字がない問題もほぼ同じパターンとなります。
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